宇宙根源の存在『太極』 ※別図1 太極図
易に太極有り、是れ両儀を生ず、両儀四象を生じ、四象八卦を生ず。(繋辞伝上)
という辞があります。『太極』というのは易の基本的哲学であり重要な根本の義でありますから、太極を疎かにすると易を理解する事が叶いません。『太』という文字は存在と同時に行動をあらわす文字です。易に太極有りというのは、易は太極を求道した学問であるという事です。『太極』とは陰陽が分かれる陰陽二元以前に存在した混沌たる状態を現わします。完全な無の状態から有の状態になる時です、完全な無とはこの宇宙に時間も空間もチリ一つ存在しない、その様な虚無であります。太極を時間で表現すれば『元始』と申します、元いなる始まりで元始、また始まりのある物には終わりがある。その様な厳正かつ絶対的である『因果』を包容しながらも、その反面に万物を創造し、その想像を具現化・具象化して行く力である『造化』の作用を有します。
この太極が両儀である陰陽の二元を生み出す造化の作用を持ち、先ずは天である陽が生れ、後に地である陰が生れた。太極の作用である命の造化の結果が則ち『陽』であり、因果を持つのが『陰』であります。太極は宇宙の根源で原初唯一絶対の存在であり、陰陽二元は太極の相対的な命の作用であって、陰陽二元そのものには万物を発生させる造化の力は存在しなく、陰陽はあくまでも太極の現象である。
太極動いて陽を生じ、静にして陰を生ずる。動極まりて静、静極まりて動、一動一静、互いにその根となり、陰陽に分かれて両儀立つ。(朱子)
太極が動くことによって、先ずは陽が生れて、動くというのは静が在るからであり、後に止まるという事となり陰が生じる。動があるから静があり、静があるから動がある。そして動が極まれば静となる。何事も達人は静かであり、また静が極まれば動となる。母親が火事場で見せる偉大な動力みたいな物です。その様に陰陽は互いに求め合い、時には反発しあう、その様に相反する磁石の様な存在でありながら、その根本は同じであり、陰が存在するから陽が存在し、陽が存在するから陰が存在する。陰陽同根と申しますが、陰陽はその様に切っても切り離すことが出来ない関係であります。その様な絶対的なバランスとして陰陽があるのは太極の持つ命の作用である造化の力によるものです、造化の力を体験したいのならば、目の前に「1億円の現金」がある事をイメージして具現化してみてください。パンでもいいですよ。
出来ましたか?出来たらそれは物凄い事ですが。それが『造化』の作用なのです。私たち人類は確かに、太極から分派・派生した命であり、運命・天命・宿命を持ちますが、命とは太極の造化作用の結果でありまして、その命には生成・化育する力はありますが、造化の作用は与えられておりません。0から1を創るのが造化とすれば、1を2にするのが生成・化育の力です。0が太極とすれば、1が陽で、2が陰です。
一物各一太極を具える。(邵康節)
例えば、大きな水たまりが一つの太極であるとすれば、その水たまりを構成する、一粒の水滴にも太極がある。大きな水たまりも円を描くように、小さな水滴も円を描く。そしてそれぞれの水滴を集合させると、元の水たまりに戻って、その水たまりが集約され、川となり、海となる。これを「一物各一太極を具える」と申しますが、全体が太極であるし、それを構成するひとつひとつにも太極が存在します。
太極のポイント
宇宙の根源であり『元始』
陰陽が生じる以前の『混沌』とした状態
万物を生じる『造化』の作用
万物の因果律であり絶対的作用『命』
天も地もひっくるめて、この世の全ての中心