運命の羅針盤『大成卦』

 

『大成卦』の成り立ち ※別図5

 

小成卦である八卦の上に八卦を組み合わせたのが『大成卦』であり『六十四卦』『重卦』とも呼ばれますが、その数は八卦の八倍の六十四卦となります。諸説ありますが古代中国の三皇五帝の一人である『神農』が大成卦を造ったとされており、その大成卦に卦辞(彖辞)を付して言語化したのが周の文王、爻辞は周公の作と言われております。大成卦の全てに六十四の卦辞が付し、大成卦は64卦×6爻で三百八十四の爻があり、その爻すべてに爻辞が付せてあります、そして乾為天・坤為地の二卦には陰と陽の用い方を説いた爻辞が二つありますから全部で三百八十六の爻辞があり、全てで450種類の卦辞・爻辞が存在するという事となります。卦辞は大成卦の持つ特徴的な作用や時勢、運命などを説明し、爻辞は大成卦の時の変化における運命の変転などを説明しています。

 

運命の吉凶が描かれている『卦辞・爻辞』

 

乾為天の卦にはこの様な『卦辞』が付されております、乾.元亨利貞.(乾は(おお)いに(とおる)(ただ)しきに()あり)とありますが、これは乾為天の卦を説明する注釈であって、卦を簡潔・簡略に現わしております。この乾.元亨利貞.という卦辞は、乾の時というのは正しい事が持続されれば物事は必ず開かれるという意味であります。この卦辞からは、今は自分がどの様な運勢に居て、これからどの様に処して行かなければならないのかという心構えを得る事が叶います。

また乾為天の初爻にはこの様な『爻辞』が付されております、初九.潜龍.勿用.(せん)(りゅう)用いるなかれ)とありますが、これは龍が目覚めたばかりで地下に居り時期尚早であるから用いてはならないという意味があります。爻辞はその大成卦の爻を説明し、そこには時勢や運勢、予見や現状などの情報が記載されております。

 

時勢を現わす『爻』 ※別図6

 

(こう)とはページを現わします、下から初・二・三・四・五・上となります。爻辞の中で初六(しょりく)、初九と付されている『六』『九』というのは六が陰を、九は陽を現わしております。偶数というのは陰の数でありまして、その偶数の最たる数が六であることから陰は六という数で示されて、最初の爻が陰であれば『初六』と現わされます。それから続いて六二・六三・六四・六五・上六(じょうりく)と呼びます。そして奇数は陽の数であり、その奇数の最たる数字が九である事から陽は九という数で示されて、最初の爻が陽であれば『初九』と現わされる、それから続いて九二・九三・九四・九五・上九と呼びます。太極から最初に芽生えたのが陽であり、初であるから陽は奇数であります、後に生じた二番目の気であるから陰は偶数となります。そして爻の順序によってその性質は大きく異なってきます、初爻は始まりであるから活動力に乏しく、二爻は内卦の真ん中であるので中庸を得ており、三爻は内卦と外卦の境目に居り、内卦の極であるので物事に過ぎる事が多く、四爻は取り締まりの任務にあたって上下から挟まれる象で、五爻は尊位であり天子の位である。最後の六爻は無位であり社会から離れた境地である。この様に爻の順序によって性質がまちまちである。

 

爻の位による任務 ※別図7

また爻の位置によってその任務や職責や立場という物も変化します、それを『(くらい)』と呼びます。初爻は一番下の位にありますから企業でいえば契約社員やパート社員の様な存在であり、二爻は一般社員、三爻は課長、四爻は取締りの任務がある部長、五爻は社の代表である代表取締役であり、六爻は現場を退いた会長職に就いていると見ます。