象伝

1.乾
天行健。君子以自強不息。【天行は健(すこや)かなり。君子以て自強(じきょう)して息まず。】
潛龍勿用。陽在下也。【潛龍用うる勿れ。陽下に在り。】
見龍在田。德施普也。【見龍田に在り。德の施し普(あまね)し。】
終日乾乾。反復道也。【終日乾乾たり。道に反(かえ)り復(かえ)る。】
或躍在淵。進无咎也。【或は躍りて淵に在り。進むこと咎なし。】
飛龍在天。大人造也。【飛龍天に在り。大人造(おこ)れり。】
亢龍有悔。盈不可久也。【亢龍悔あり。盈(み)ちては久しかるべからず。】
用九。天德不可為首也。【用九。天德首と為るべからず。】

2.坤
地勢坤。君子以厚德載物。【地勢は坤なり。君子以て厚德物(こうとくもの)を載(の)す。】
履霜堅冰。陰始凝也。馴致其道。至堅冰也。【霜を履んで堅冰。陰始めて凝(こ)る。馴致其道。至堅冰也。】
六二之動。直以方也。不習无不利。地道光也。【六二の動き。直にして方なり。習わざれども利あらざるなきは。地道光(ちどうおお)いなればなり。】
含章可貞。以時發也。或從王事。知光大也。【章(しょう)を含む貞にすべし。時を以て發す。或は王事に從う。知(ち)光大なり。】
括囊无咎。慎不害也。【囊を括る咎なし。慎みて害(そこな)はず。】
黃裳元吉。文在中也。【黃裳元吉なるは。文中に在ればなり。】
戰龍於野。其道窮也。【龍野に於いて戰う。其の道窮まる。】
用六永貞。以大終也。【用六の永貞は。大を以て終るなり。】

3.屯
雲雷屯。君子以經綸。【雲雷は屯なり。君子以て經綸(けいりん)す。】
雖磐桓。志行正也。以貴下賤。大得民也。【磐桓と雖も。志正しきを行う。貴きを以て賤(いやし)きに下る。大いに民を得るなり。】
六二之難。乘剛也。十年乃字。反常也。【六二の難。剛に乘ればなり。十年にして乃(すなわ)ち字すとは。常に反(かえ)るなり。】
即鹿无虞。以縱禽也。君子舍之。往吝窮也。【鹿に即くに虞なし。以て禽(えもの)に縱(したが)うなり。君子之を舍(す)て。往けば吝窮(きゅう)するなり。】
求而往。明也。【求めて往く。明らかなるなり。】
屯其膏。施未光也。【其の膏(あぶら)を屯(ちゅん)す。施すこと未だ光(おお)いならず。】
泣血漣如。何可長也。【泣血漣如(きゅうけつれんじょ)たり。何ぞ長かるべけんや。】

4.蒙
山下出泉。蒙。君子以果行育德。【山の下に泉を出だす。蒙。君子以て果行育德(かぎょういくとく)す。】
利用刑人。以正法也。【用(もつ)て人を刑するに利あり。以て法を正しくす。】
子克家。剛柔接也。【子家を克(よ)くす。剛柔接(まじ)わるなり。】
勿用取女。行不順也。【女を取(めと)るに用うるなかれ。行い順(したが)わざるなり。】
困蒙之吝。獨遠實也。【困蒙の吝。獨(ひとり)實(じつ)に遠ざかればなり。】
童蒙之吉。順以巽也。【童蒙の吉。巽(そん)順(じゅん)なり。】
利用禦寇。上下順也。【用て寇(あだ)を禦(ふせ)ぐに利あり。上下順(したが)うなり。】

5.需
雲上於天。需。君子以飲食宴樂。【雲天に上るは。需。君子以て飲食宴樂(えんらく)す。】
需于郊。不犯難行也。利用恆。无咎。未失常也。【郊に需つ。難を犯して行かざるなり。恆を用うるに利あり。无なし。未だ常を失わず。】
需于沙。衍在中也。雖小有言。以終吉也。【沙(すな)に需つ。衍(ゆた)かにして中に在り。小しく言(ものいい)有りといえども。以て終に吉なり。】
需于泥。災在外也。自我致寇。敬慎不敗也。【泥に需つ。災外に在り。我より寇を致す。敬(つつ)み慎(つつ)まば敗れじ。】
需于血。順以聽也。【血に需つ。順って以て聽くなり。】
酒食貞吉。以中正也。【酒食(しゅし)貞(ただし)ければ吉。中正を以てなり。】
不速之客來。敬之終吉。雖不當位。未大失也。【速(まね)かざるの客來る。之を敬すれば終に吉。位に當らずと雖も。未だ大(おおい)に失わざるなり。】

6.訟
天與水違行。訟。君子以作事謀始。【天と水と違(たが)い行く。訟。君子以て事を作(な)すに始めを謀る。】
不永所事。訟不可長也。雖有小言。其辯明也。【事とする所を永くせず。訟(うった)えは長くすべからず。小(すこ)しく言(ものいい)ありと雖も。其の辯(べん)明らかなり。】
不克訟。歸逋竄也。自下訟上。患至掇也。【訟えに克たず。歸(かえ)りて逋(のが)れ竄(かく)れるなり。下より上を訟える。患い(うれ)の至る(いたる)は掇(と)れるなり。】
食舊德。從上吉也。【舊德(きゅうとく)に食(は)む。上に從えば吉なり。】
復即命。渝安貞。不失也。【復って命に即く。渝りて貞に安んずとは。失せざるなり。】
訟元吉。以中正也。【訟え元吉とは。中正を以てなり。】
以訟受服。亦不足敬也。【訟えて以て服(ふく)を受く。亦(ま)た敬まうに足らず。】

7.師
地中有水。師。君子以容民畜眾。【地中に水有るは。師。君子以て民を容(い)れ眾(しゅう)を畜う。】
師出以律。失律凶也。【師出ずるに律を以てす。律を失えば凶なり。】
在師中吉。承天寵也。王三錫命。懷萬邦也。【師中に在り吉。天寵(てんちょう)を承く。王三(おうみ)たび命を錫う。萬邦を懷くるなり。】
師或輿尸。大无功也。【師或は尸(かばね)を輿(にな)う。大に功なし。】
左次无咎。未失常也。【左に次(やど)る无なし。未だ常を失わざればなり。】
長子帥師。以中行也。弟子輿尸。使不當也。【長子帥(いくさ)を師(ひき)ゆ。中行以てなり。弟子(ていし)尸(かばね)を輿(にな)う。使うこと當らざるなり。】
大君有命。以正功也。小人勿用。必亂邦也。【大君命有り。以て功を正す。小人用うるなかれ。必ず邦(くに)を亂すなり。】


8.比
地上有水。比。先王以建萬國。親諸侯。【地上に水有り。比。先王以て萬國を建て。諸侯を親しむ。】
比之初六。有他吉也。【比之初六。他の吉あり。】
比之自內。不自失也。【之に比すること内よりす。自から失わず。】
比之匪人。不亦傷乎。【之に比する人にあらず。亦(ま)た傷(いた)ましからずや。】
外比於賢。以從上也。【外賢に比するは。上に從うを以てなり。】
顯比之吉。位正中也。舍逆取順。失前禽也。邑人不誡。上使中也。【比を顯(あき)らかにするの吉は。位正中なればなり。逆を舍(す)て順を取り。前禽(ぜんきん)を失するなり。邑人(ゆうじん)を誡(いま)めず。上(かみ)の使うこと中なり。】
比之无首。无所終也。【之に比すること首(かしら)なし。終る所なし。】

9.小畜
風行天上。小畜。君子以懿文德。【風天の上に行くは。小畜。君子以て文德を懿(よ)くす。】
復自道。其義吉也。【復ること道よりす。其の義吉なり。】
牽復在中。亦不自失也。【牽(ひ)きて復(かえ)る中に在り。亦た自から失わず。】
夫妻反目。不能正室也。【夫妻反(はん)目(もく)す。室を正すこと能わざるなり。】
有孚惕出。上合志也。【孚有りて惕(おそ)れ出(い)づ。上志(こころざし)を合(がっ)す。】
有孚攣如。不獨富也。【孚有りて攣如(れんじょ)。獨(ひと)り富まず。】
既雨既處。德積載也。君子征凶。有所疑也。【既に雨ふり既に處(お)る。德積(つも)り載(の)るなり。君子征けば凶なり。疑う所有り。】

10.履
上天下澤。履。君子以辨上下。定民志。【上は天下は澤なるは。履。君子以て上下を辨(わきま)え。民の志しを定む。】
素履之往。獨行願也。【素(そ)履(り)の往くは。獨り願いを行うなり。】
幽人貞吉。中不自亂也。【幽人なれば貞にして吉とは。中(うち)自ら亂れずなり。】
眇能視。不足以有明也。跛能履。不足以與行也。咥人之凶。位不當也。武人為于大君。志剛也。【眇(すがめ)にして視る。以て明有るに足らざるなり。跛(あしなえ)にして履む。以て與(とも)に行くに足らざるなり。人を咥うの凶は。位當らざるなり。武人大君を為すは。志し剛なればなり。】
愬愬終吉。志行也。【愬愬終に吉なるは。志し行われるなり。】
夬履貞厲。位正當也。【夬(さだ)めて履む貞なれど厲しとは。位正(まさ)に當ればなり。】
元吉在上。大有慶也。【元吉上に在り。大いに慶び有るなり。】

11.泰
天地交泰。后以財成天地之道。輔相天地之宜。以左右民。【天地交わるは泰。后以て天地の道を財成(ざいせい)し。天地の宜(ぎ)を輔相(ほしょう)し。以て民を左右す。】
拔茅征吉。志在外也。【茅(ちがや)を拔きて征けば吉。志外に在るなり。】
包荒。得尚于中行。以光大也。【荒を包ね。中行に尚(かな)うを得れば。光大なるを以てなり。】
无往不復。天地際也。【往きて復らずということはなし。天地際(まじ)わるなり。】
翩翩不富。皆失實也。不戒以孚。中心願也。【翩翩(へんぺん)として富まず。皆實(じつ)を失すればなり。戒めずして以て孚あり。中心願えばなり。】
以祉元吉。中以行願也。【祉(さいわ)いを以て元吉とは。中にして以て願いを行うなり。】
城復于隍。其命亂也。【城隍(しろほり)に復(かえ)る。其の命亂れるなり。】


12.否
天地不交。否。君子以儉德辟難。不可榮以祿。【天地交わらざるは。否。君子以て德を儉(けん)して難を辟(さ)く。榮(えい)するに祿を以てすべからず。】
拔茅貞吉。志在君也。【茅(ちがや)を拔くに貞なるときは吉。志し君に在るなり。】
大人否亨。不亂群也。【大人は否にして亨る。群に亂れざるなり。】
包羞。位不當也。【包羞す。位當らざればなり。】
有命无咎。志行也。【命有り咎なし。志行われるなり。】
大人之吉。位正當也。【大人の吉は。位正に當ればなり。】
否終則傾。何可長也。【否終れば傾く。何ぞ長かるべけんや。】

13.同人
天與火。同人。君子以類族辨物。【天と火とは。同人。君子以て族(ぞく)を類(るい)し物を辨(べん)ず。】
出門同人。又誰咎也。【門を出でて人と同じうする。また誰か咎めん。】
同人于宗。吝道也。【人と同じうするに宗に于(おい)てす。吝の道なり。】
伏戎于莽。敵剛也。三歲不興。安行也。【戎を莽に伏するは。敵剛なればなり。三歳まで興さず。いずくんぞ行かん。】
乘其墉。義弗克也。其吉。則困而反則也。【其の墉に乘る。義克たざるなり。其吉は。困しんで則に反ればなり。】
同人之先。以中直也。大師相遇。言相克也。【同人の先は。中直なるを以てなり。大師相い遇うは。相い克つを言うなり。】
同人于郊。志未得也。【人と同じうするに郊に于(おい)てす。志し未だ得ざるなり。】

14.大有
火在天上。大有。君子以遏惡揚善。順天休命。【火天上に在るは。大有。君子以て惡を遏(とど)め善を揚げ。天の休(きゅう)命(めい)に順(したが)う。】
大有初九。无交害也。【大有の初九は。害に交(わた)ることなし。】
大車以載。積中不敗也。【大車以て載(の)す。中に積んで敗れざるなり。】
公用亨于天子。小人害也。【公用て天子に亨(きょう)す。小人害あるなり。】
匪其彭。无咎。明辨晰也。【其の彭なるにあらず。咎なし。明辨晰(せき)たるなり。】
厥孚交如。信以發志也。威如之吉。易而无備也。【その孚あって交如たり。信以て志しを發するなり。威如の吉なるは。易(やす)くして備うるなければなり。】
大有上吉。自天佑也。【大有の上の吉なるは。天より佑(たす)くればなり。】

15.謙
地中有山。謙。君子以裒多益寡。稱物平施。【地中に山有るは。謙。君子以て多きを裒(へら)し寡(すくな)きを益す。物に稱(かな)って施しを平(ひと)しくす。】
謙謙君子。卑以自牧也。【謙(けん)謙(けん)たる君子は。卑(ひ)以て自ら牧(やしな)うなり。】
鳴謙貞吉。中心得也。【鳴(めい)謙(けん)す貞にして吉。中心得(う)ればなり。】
勞謙君子。萬民服也。【勞(ろう)謙(けん)たる君子は。萬民服(ふく)するなり。】
无不利。撝謙。不違則也。【利あらざるなし。謙を撝(ふる)うとは。則(のり)に違(たが)わざるなり。】
利用侵伐。征不服也。【用て侵伐(しんばつ)するに利あり。服せざるを征するなり。】
鳴謙。志未得也。可用行師。征邑國也。【鳴(めい)謙(けん)す。志し未だ得ざるなり。用て師(いくさ)を行(や)るべし。邑國を征するなり。】

16.豫
雷出地奮。豫。先王以作樂崇德。殷薦之上帝。以配祖考。【雷地を出でて奮うは。豫。先王以て樂(がく)を作り德を崇(たっと)び。殷(さかん)にこれを上帝(じょうてい)に薦(すす)め。以て祖考(そこう)を配(はい)す。】
初六鳴豫。志窮凶也。【初六の鳴豫は。志し窮まって凶なり。】
不終日。貞吉。以中正也。【日を終えず。貞吉なるは。中正を以てなり。】
盱豫有悔。位不當也。【盱豫(くよ)悔あるは。位當(あた)らざればなり。】
由豫。大有得。志大行也。【由豫(ゆうよ)。大いに得る有りは。志し大いに行われるなり。】
六五貞疾。乘剛也。恆不死。中未亡也。【六五貞にして疾(や)むは。剛に乘ればなり。恆に死せず。中(ちゅう)未だ亡びざればなり。】
冥豫在上。何可長也。【冥豫(めいよ)して上に在り。何ぞ長かるべけんや。】

17.隨
澤中有雷。隨。君子以嚮晦入宴息。【澤中に雷あるは。隨。君子以て晦(くら)きに嚮(むか)って入りて宴(えん)息(そく)す。】
官有渝。從正吉也。出門交有功。不失也。【官渝(かわ)ること有り。正に從えば吉なり。門を出でて交わるに功あり。失(しつ)あらざるなり。】
係小子。弗兼與也。【小子に係(かか)りて。兼ねて與(くみ)せざるなり。】
係丈夫。志舍下也。【丈夫に係(かか)りて。志し下を舍(す)つるなり。】
隨有獲。其義凶也。有孚在道。明功也。【隨って獲る有り。其の義凶なり。孚有り道在るは。明の功なり。】
孚于嘉。吉。位正中也。【嘉(か)に孚あり。吉。位正中なればなり。】
拘係之。上窮也。【之を拘(とら)え係(くく)る。上(かみ)窮(きわ)まるなり。】

18.蠱
山下有風。蠱。君子以振民育德。【山の下に風有り。蠱(こ)。君子以て民を振(にぎわ)わし德を育(やしな)う。】
幹父之蠱。意承考也。【父の蠱(こと)に幹たり。意考(こころちち)に承(う)くるなり。】
幹母之蠱。得中道也。【母の蠱に幹たり。中道を得るなり。】
幹父之蠱。終无咎也。【父の蠱に幹たり。終に咎なきなり。】
裕父之蠱。往未得也。【父の蠱を裕(ゆる)うす。往かんとして未だ得ざるなり。】
幹父之蠱用譽。承以德也。【父の蠱に幹たり用て譽れあるは。承(う)くるに德を以てするなり。】
不事王侯。志可則也。【王侯に事えず。志し則(のっと)るべし。】

19.臨
澤上有地。臨。君子以教思无窮。容保民无疆。【澤の上に地有り。臨。君子以て教思(きょうし)窮(きわ)まりなく。民を容れ保んずること疆(かぎ)りなし。】
咸臨貞吉。志行正也。【咸じて臨む貞しければ吉なるは。志し正を行うなり。】
咸臨。吉无不利。未順命也。【咸じて臨む。吉にして利あらざるなきは。未だ命に順わざるなり。】
甘臨。位不當也。既憂之。咎不長也。【甘んじて臨む。位當らざるなり也。既に之を憂うれば。咎は長からざるなり。】
至臨无咎。位當也。【至りて臨む无なきは。位當ればなり。】
大君之宜。行中之謂也。【大君の宜(ぎ)は。中を行うの謂(い)いいなり。】
敦臨之吉。志在內也。【敦(とん)臨(りん)の吉なるは。志し内に在ればなり。】

20.觀
風行地上。觀。先王以省方。觀民設教。【風地上に行くは。觀。先王以て方を省(み)。民を觀て教えを設く。】
初六童觀。小人道也。【初六の童觀(どうかん)は。小人の道なり。】
窺觀女貞。亦可醜也。【窺觀(きかん)女(じょ)貞(てい)なるも。亦(ま)た醜(は)ずべきなり。】
觀我生進退。未失道也。【我が生を觀て進退す。未だ道を失(しっ)せざるなり。】
觀國之光。尚賓也。【國の光を觀る。賓(ひん)たらんことを尚(こいねがう)うなり。】
觀我生。觀民也。【我が生を觀るは。民を觀るなり。】
觀其生。志未平也。【其の生を觀る。志未だ平かならず。】

21.噬嗑
雷電噬嗑。先王以明罰敕法。【雷電あるは噬嗑なり。先王以て罰を明らかにして法を敕(ととの)う。】
屨校滅趾。不行也。【校(かせ)を屨(は)いて趾(あし)を滅(やぶ)る。行かざるなり。】
噬膚滅鼻。乘剛也。【膚(はだえ)を噬(か)んで鼻を滅(つく)す。剛に乘ればなり。】
遇毒。位不當也。【毒に遇うは。位當らざるなり。】
利艱貞吉。未光也。【艱(かん)貞(てい)に利あり吉。未だ光(おお)いならざる。】
貞厲无咎。得當也。【貞厲(ていれい)咎なきは。當(とう)を得ればなり。】
何校滅耳。聰不明也。【校(かせ)を何(にな)いて耳を滅(やぶ)るは。聰(そう)不明なればなり。】

22.賁
山下有火。賁。君子以明庶政。无敢折獄。【山の下に火あるは。賁。君子以て庶政(しょせい)を明らかにし。敢(あえ)て獄(ごく)を折(さだ)むることなし。】
舍車而徒。義弗乘也。【車を舍(す)てて徒(かち)よりす。義において乘らざるなり。】
賁其須。與上興也。【其の須(ひげ)を賁る。上と興(おこ)るなり。】
永貞之吉。終莫之陵也。【永貞の吉なるは。終(つい)にこれを陵(しの)ぐなければなり。】
六四。當位疑也。匪寇婚媾。終无尤也。【六四は。位に當ること疑わしきなり。寇するにあらず婚媾せんとす。終に尤めなきなり。】
六五之吉。有喜也。【六五の吉なるは。喜あるなり。】
白賁无咎。上得志也。【白く賁る咎なきは。上にして志しを得えばなり。】

23.剝
山附地。剝。上以厚下。安宅。【山地に附(つ)けるは。剝。上(かみ)以て下(しも)を厚くし。宅(たく)を安んず。】
剝牀以足。以滅下也。【牀(しょう)を剝するに足に以(およ)ぶ。下より滅すを以てなり。】
剝牀以辨。未有與也。【剝を牀するに辨(べん)に以ぶ。未だ與(よ)有らざるなり。】
剝之无咎。失上下也。【之を剝す咎なし。上下を失えばなり。】
剝牀以膚。切近災也。【牀を剝して膚(はだえ)に以(およ)ぶ。切(せつ)に災に近づけり。】
以宮人寵。終无尤也。【宮人を以(ひき)いて寵(ちょう)せらる。終に尤(とが)めなきなり。】
君子得輿。民所載也。小人剝廬。終不可用也。【君子は輿を得て。民の載す所なり。小人は廬を剝す。終に用うるべからざるなり。】

24. 復
雷在地中。復。先王以至日閉關。商旅不行。后不省方。【 雷地中に在るは。復。先王以て至(し)日(じつ)に關(かん)を閉ざし。商(しょう)旅(りょ)行かず。后方(きみほう)を省(み)ず。】
不遠之復。以修身也。【 遠からざるの復ることは。以て身を修めんとなり。】
休復之吉。以下仁也。【 休(きゅう)復(ふく)の吉なるは。仁に下るを以てなり。】
頻復之厲。義无咎也。【 頻(ひん)復(ぷく)の厲きは。義において咎なきなり。】
中行獨復。以從道也。【 中行獨り復る。道に從うを以てなり。】
敦復无悔。中以自考也。【 復るに敦し悔なきは。中以て自ら考(な)せばなり。】
迷復之凶。反君道也。【 迷(めい)復(ふく)の凶なるは。君の道に反(そむ)けばなり。】
 
25. 无妄
天下雷行。物與无妄。先王以茂對時。育萬物。【 天の下雷行き。物ごとに无妄を與(あた)う。先王以て茂んに時に對(たい)して。萬物を育す。】
无妄之往。得志也。【 无妄の往くは。志しを得ればなり。】
不耕獲。未富也。【 耕さずして獲。未だ富まざるなり。】
行人得牛。邑人災也。【 行人牛を得るは。邑人の災いなり。】
可貞无咎。固有之也。【 貞に可べし咎なし。固くこれを有(まも)るなり。】
无妄之藥。不可試也。【 无妄の藥は。試みるべからざるなり。】
无妄之行。窮之災也。【 无妄の行くは。窮(きゅう)の災(さい)あるなり。】
 
26. 大畜
天在山中。大畜。君子以多識前言往行。以畜其德。【 天山の中に在るは。大畜。君子以て多く前言往(ぜんげんおう)行(こう)を識(し)りて。以て其の德を畜(たくわ)う。】
有厲利已。不犯災也。【厲きこと有り已(や)むに利あり。災いを犯さざるなり。】
輿說輹。中无尤也。【 輿輹(くるまとこしばり)を説(と)く。中にして尤(とが)めなきなり。】
利有攸往。上合志也。【往くところあるに利あるは。上志しを合するなり。】
六四元吉。有喜也。【 六四の元吉なるは。喜びあるなり。】
六五之吉。有慶也。【 六五の吉は。慶びあるなり。】
何天之衢。道大行也。【天を何(お)うの衢(みち)とは。道大いに行なわるるなり。】
 
 
 27. 頤
山下有雷。頤。君子以慎言語。節飲食。【 山の下に雷有るは。頤。君子以て言語を慎み。飲食を節す。】
觀我朵頤。亦不足貴也。【我を觀て頤(い)を朶(た)る。亦た貴(とうと)ぶに足らざるなり。】
六二征凶。行失類也。【六二征きて凶なるは。行きて類を失すればなり。】
十年勿用。道大悖也。【十年用うるなかれ。道大いに悖(もと)れるなり。】
顛頤之吉。上施光也。【顛(さかし)まに頤(やしな)われることの吉なるは。上の施し光(おお)いなればなり。】
居貞之吉。順以從上也。【貞に居るの吉なるは。順にして以て上に從えばなり。】
由頤厲吉。大有慶也。【由(よ)って頤(やしな)わる厲くして吉。大いに慶び有るなり。】
 
28.大過
澤滅木。大過。君子以獨立不懼。遯世无悶。【 澤木を滅すは。大過。君子以て獨立して懼(おそ)れず。世を遯(のが)れども悶(いきどお)ることなし。】
藉用白茅。柔在下也。【 藉(し)くに白(はく)茅(ぼう)を用てす。柔下に在ればなり。】
老夫女妻。過以相與也。【 老夫女妻(ろうふじょさい)。過て以て相(あい)い與(くみ)すなり。】
棟橈之凶。不可以有輔也。【 棟橈むの凶は。以て輔(たす)くることあるべからざるなり。】
棟隆之吉。不橈乎下也。【 棟隆しの吉は。不に橈(たわ)まざればなり。】
枯楊生華。何可久也。老婦士夫。亦可醜也。【 枯(こ)楊(よう)華(はな)を生ず。何ぞ久しかるべけんや。老婦士夫(ろうふしふ)。亦た醜べきなり。】
過涉之凶。不可咎也。【 過涉之凶。不可咎也。】
 
29.坎
水洊至。習坎。君子以常德行。習教事。【 水洊(しきり)に至るは。習坎。君子以て德行を常にし。教事を習わす。】
習坎入坎。失道凶也。【坎を習(かさ)ねて坎に入る。道を失って凶なり。】
求小得。未出中也。【求めて小しく得るは。未だ中を出でざればなり。】
來之坎坎。終无功也。【來るも之(ゆ)くも坎坎(かんかん)たり。終に功なきなり。】
樽酒簋貳。剛柔際也。【樽酒簋(そんしゅき)あり。剛柔際(まじ)わるなり。】
坎不盈。中未大也。【坎盈(み)たず。中いまだ大ならず。】
上六失道。凶三歲也。【上六の道を失する。凶三歲なり。】
 
30.離
明兩作離。大人以繼明照于四方。【明兩(ふた)たび作(おこ)るは離。大人以て明を繼(つ)ぎ四方を照らす。】
履錯之敬。以辟咎也。【履錯(りさく)の敬(つつし)みは。以て咎を辟けんとなり。】
黃離元吉。得中道也。【黃離(こうり)元吉なるは。中道を得ればなり。】
日昃之離。何可久也。【日昃の離。何ぞ久しかるべけんや。】
突如其來如。无所容也。【突如其れ來如。容るる所なきなり。】
六五之吉。離王公也。【 六五の吉なるは。王公に離けばなり。】
王用出征。以正邦也。【 王用て出(しゅっ)征(せい)す。以て邦を正すなり。】
 
 31.咸
 山上有澤。咸。君子以虛受人。【 山の上に澤。咸。君子以て虛にして人を受く。】
 咸其拇。志在外也。【其の拇(おやゆび)に咸す。志し外に在るなり。】
 雖凶居吉。順不害也。【凶なりと雖(いえど)も居れば吉なるは。順うときは害あらざるなり。】
 咸其股。亦不處也。志在隨人。所執下也。【其の股(もも)に咸す。亦た處(お)らざるなり。志し人に隨うに在り。執る所下(ひく)きなり。】
 貞吉悔亡。未感害也。憧憧往來。未光大也。【貞しければ吉にして悔い亡ぶるは。未だ害に感せざるなり。憧憧(しょうしょう)として往來(おうらい)すれば。未だ光大ならざるなり。】
 咸其脢。志末也。【其の脢(せじし)に咸す。志し末なり。】
 咸其輔頰舌。滕口說也。【其の輔頰(ほきょう)舌(ぜつ)に咸す。口説(こうぜつ)を滕(あ)ぐるなり。】
 
 32. 恆
 雷風。恆。君子以立不易方。【雷風あるは。恆。君子以て立つに方を易えず。】
 浚恆之凶。始求深也。【浚(ふか)く恆(つね)にするの凶なるは。始めにして求むること深ければなり。】
 九二悔亡。能久中也。【九二悔亡ぶるは。能く中に久しければなり。】
 不恆其德。无所容也。【其の德を恆にせず。容(い)るる所なきなり。】
 久非其位。安得禽也。【久しきも其の位にあらず。安(いずく)んぞ禽(えもの)を得ん。】
 婦人貞吉。從一而終也。夫子制義。從婦凶也。【婦人は貞しくして吉。一に從って終ればなり。夫子は義を制す。婦に從えば凶なり。】
 振恆在上。大无功也。【振くこと恆にして上(かみ)に在り。大いに功なきなり。】
 
 33. 遯
天下有山。遯。君子以遠小人。不惡而嚴。【天の下に山有るは。遯。君子以て小人を遠ざけ。惡まずして嚴なり。】
遯尾之厲。不往何災也。【遯(とん)尾(び)の厲(あやう)き。往かずんば何の災いかあらん。】
執用黃牛。固志也。【執(とら)うるに黃牛を用てするは。志しを固くするなり。】
係遯之厲。有疾憊也。畜臣妾吉。不可大事也。【係遯の厲(あやう)き。疾あって憊(くる)しむなり。臣(しん)妾(しょう)を畜うに吉。大事に可ならず。】
君子好遯。小人否也。【君子は好遯するも。小人はしからざるなり。】
嘉遯貞吉。以正志也。【嘉遯貞吉なるは。志を正しくするを以てなり。】
肥遯。无不利。无所疑也。【肥遯。利あらざるなきは。疑う所なければなり。】
 
34.大壯
雷在天上。大壯。君子以非禮勿履。【雷の天上に在るは。大壯。君子以て禮にあらざれば履まず。】
壯于趾。其孚窮也。【趾に壯んなり。其れ孚に窮するなり。】
九二貞吉。以中也。【九二の貞吉なるは。中を以てなり。】
小人用壯。君子罔也。【小人は壯を用い。君子は罔(な)し。】
藩決不羸。尚往也。【藩決(まがきひら)けて羸(くる)しまず。尚(なお)往くなり。】
喪羊于易。位不當也。【羊を易に喪うは。位當らざればなり。】
不能退。不能遂。不祥也。艱則吉。咎不長也。【退く能わず。遂(すす)む能わざるは。不祥(ふしょう)なり。艱(くる)しめば吉。咎長(なが)からざるなり。】
 
35.晉
明出地上。晉。君子以自昭明德。【明地上に出ずるは。晉。君子以て自ら明德を昭(あきら)かにす。】
晉如。摧如。獨行正也。裕无咎。未受命也。【晉如。摧如。獨り正を行うなり。裕かなるときは咎なし。未だ命を受けざればなり。】
受玆介福。以中正也。【玆(こ)の介(おお)いなる福を受けるは。中正を以てなり。】
眾允之。志上行也。【眾(しゅう)これを允(まこと)とす。志し上行(じょうこう)すればなり。】
碩鼠貞厲。位不當也。【碩鼠貞しければ厲きは。位當らざればなり。】
失得勿恤。往有慶也。【失得恤うるなかれ。往きて慶びあるなり。】
維用伐邑。道未光也。【維(こ)れ用(もつ)て邑(ゆう)を伐(う)つ。道未だ光いならざるなり。】
 
36. 明夷
明入地中。明夷。君子以蒞眾。用晦而明。【明地中に入るは。明夷。君子以て眾(しゅう)に蒞(のぞ)むに。晦きを用てして而も明らかなり。】
君子于行。義不食也。【君子于(ゆ)き行く。義食(くら)わざるなり。】
六二之吉。順以則也。【六二の吉なるは。順にして以て則(のり)あればなり。】
南狩之志。乃大得也。【南に之を狩る志しは。乃ち大いに得るなり。】
入于左腹。獲心意也。【左の腹に入るは。心意を獲るなり。】
箕子之貞。明不可息也。【箕子の貞。明息(や)むべからざるなり。】
初登于天。照四國也。後入于地。失則也。【初めは天に登る。四國を照らすなり。後には地に入る。則(のり)を失うなり。】
 
37.家人
風自火出。家人。君子以言有物。而行有恆。【風火より出ずる。家人。君子以て言物(こともの)あって。行い恆あり。】
閑有家。志未變也。【有家に閑ぐ。志し未だ變ぜざるなり。】
六二之吉。順以巽也。【六二の吉なるは。順にして以て巽なればなり。】
家人嗃嗃。未失也。婦子嘻嘻。失家節也。【家人嗃嗃(かくかく)たるは。未だ失せざるなり。婦子嘻嘻(きき)たるは。家の節を失するなり。】
富家大吉。順在位也。【家を富ます大吉なるは。順にして位に在ればなり。】
王假有家。交相愛也。【王有家に假(いた)る。交々(こもごも)相愛(そうあい)するなり。】
威如之吉。反身之謂也。【威如たるの吉なるは。身に反(かえ)えるの謂いなり。】
 
38.睽
上火下澤。睽。君子以同而異。【上に火あり下に澤あるは。睽。君子以て同じくして異なり。】
見惡人。以辟咎也。【惡人を見るは。以て咎を辟けんとなり。】
遇主于巷。未失道也。【主に巷(ちまた)に遇う。未だ道を失わざるなり。】
見輿曳。位不當也。无初有終。遇剛也。【輿を曳かるるは。位當らざればなり。初めなくして終りあり。剛に遇えば。】
交孚无咎。志行也。【交々(こもごも)孚ありて无なきは。志し行われるなり。】
厥宗噬膚。往有慶也。【その宗(そう)膚(はだえ)を噬む。往きて慶びあるなり。】
遇雨之吉。群疑亡也。【雨に遇うの吉なるは。群疑(ぐんぎ)亡ぶればなり。】
 
39. 蹇
山上有水。蹇。君子以反身修德。【山の上に水有り。蹇。君子以て身に反(かえ)りて德を修む。】
往蹇來譽。宜待也。【往くときは蹇(なや)みあり來るときは譽れあり。宜しく待つなり。】
王臣蹇蹇。終无尤也。【王臣蹇蹇(おうしんけんけん)。終に尤(とが)なきなり。】
往蹇來反。內喜之也。【往くときは蹇みあり來るときは反(かえ)る。内これを喜ぶなり。】
往蹇來連。當位實也。【往くときは蹇みあり來るときは連なる。位に當って實なればなり。】
大蹇朋來。以中節也。【大蹇朋(だいけんとも)來る。中の節を以てなり。】
往蹇來碩。志在內也。利見大人。以從貴也。【往くときは蹇(なや)みあり來るときは碩(おお)いなり。志し内に在り。大人を見るに利あり。貴に從うを以てなり。】
 
 40. 解
雷雨作。解。君子以赦過宥罪。【雷雨作(おこ)るは。解。君子以て過ちを赦(ゆる)して罪を宥(なだ)む。】
剛柔之際。義无咎也。【剛柔の際(まじ)わり。義(ぎ)咎なし。】
九二貞吉。得中道也。【九二の貞吉なるは。中道を得ればなり。】
負且乘。亦可醜也。自我致戎。又誰咎也。【負(お)い且(か)つ乘る。亦た醜(は)ずべきなり。我より戎(じゅう)を致す。又た誰かを咎めん。】
解而拇。未當位也。【而(なんじ)の拇(おやゆび)を解く。未だ位當らざるなり。】
君子有解。小人退也。【君子解くこと有れば。小人退くなり。】
公用射隼。以解悖也。【公用て隼を射るとは。以て悖(はい)を解くなり。】

41. 損
山下有澤。損。君子以懲忿窒欲。【山の下に澤有るは。損。君子以て忿(いかり)を懲(こ)らして欲を窒(ふせ)ぐ。】
巳事遄往。尚合志也。【事を巳(や)めて遄(すみや)かに往く。尚(かみ)志しを合するなり。】
九二利貞。中以為志也。【九二の利貞なるは。中以て志しと為せばなり。】
一人行。三則疑也。【一人行く。三なれば疑わしきなり。】
損其疾。亦可喜也。【其の疾いを損す。亦た喜ぶべきなり。】
六五元吉。自上佑也。【六五の元吉なるは。上より佑くればなり。】
弗損益之。大得志也。【損せずしてこれを益す。大いに志しを得るなり。】

42. 益
風雷。益。君子以見善則遷。有過則改。【風雷あるは。益。君子以て善を見ては遷(うつ)り。過ちあれば改む。】
元吉无咎。下不厚事也。【元吉にして无なきは。下厚事(こうじ)をせざればなり。】
或益之。自外來也。【或は之を益す。外より來るなり。】
益用凶事。固有之也。【益の凶事に用うるは。固よりこれ有るなり。】
告公從。以益志也。【公に告げて從わる。益の志しを以てなり。】
有孚惠心。勿問之矣。惠我德。大得志也。【孚ありて惠(けい)心(しん)あれば。之を問うなかれ。我に德を惠む。大いに志しを得るなり。】
莫益之。偏辭也。或擊之。自外來也。【之に益すことなきは。偏辭なればなり。或いはこれを擊つ。外より來るなり。】
 
 43. 夬
澤上于天。夬。君子以施祿及下。居德則忌。【澤天に上るは。夬。君子以て祿を施して下に及ぼす。德に居れば則(すなわ)ち忌(い)む。】
不勝而往。咎也。【勝たずして往く。咎なり。】
有戎勿恤。得中道也。【戎(つわもの)あれど恤うるなきは。中道を得ればなり。】
君子夬夬。終无咎也。【君子は夬夬(かいかい)。終に咎なきなり。】
其行次且。位不當也。聞言不信。聰不明也。【其の行くことは次(し)且(しょ)たり。位當らざればなり。言を聞くとも信ぜじ。聰(さと)きこと明かならず。】
中行无咎。中未光也。【中行咎なし。中未(いま)だ光(おお)いならざるなり。】
无號之凶。終不可長也。【號(さけ)ぶことなきの凶。終に長かるべからず。】
 
 44. 姤
 天下有風。姤。后以施命誥四方。【天の下に風有り。姤。后以て命を施し四方に誥(つ)ぐ。】
 繫于金柅。柔道牽也。【金柅(きんじ)に繫ぐ。柔道牽(すす)めばなり。】
 包有魚。義不及賓也。【包に魚有り。義(ぎ)賓(ひん)に及ばざるなり。】
 其行次且。行未牽也。【其の行くこと次(し)且(しょ)たり。行いて未だ牽(ひ)かれざるなり。】
 无魚之凶。遠民也。【魚なきの凶なるは。民に遠ざかればなり。】
 九五含章。中正也。有隕自天。志不舍命也。【九五章を含むは。中正なればなり。天より隕(お)つることあり。志し命を舍(お)かざるなり。】
 姤其角。上窮吝也。【其の角に姤(あ)う。上に窮まって吝なり。】
 
 45. 萃
 澤上於地。萃。君子以除戎器。戒不虞。【澤地に上るは。萃。君子以て戎器(じゅうき)を除(じょ)して。不虞(ふぐ)を戒(いまし)む。】
 乃亂乃萃。其志亂也。【乃(すなわ)ち亂れ乃ち萃る。其の志し亂るるなり。】
 引吉无咎。中未變也。【引けば吉にして咎なし。中未だ變ぜざればなり。】
 往无咎。上巽也。【往けば咎なし。上巽えばなり。】
 大吉无咎。位不當也。【大吉にして咎なし。位當らざればなり。】
 萃有位。志未光也。【萃るに位有り。志し未だ光(おお)いならざるなり。】
 齎咨涕洟。未安上也。【齎咨(しし)涕洟(ていい)するは。未だ上に安んぜればなり。】
 
 46. 升
 地中生木。升。君子以順德。積小以高大。【地の中に木を生ずるは。升。君子以て德を順にし。小を積みて以て高大(こうだい)にす。】
 允升大吉。上合志也。【允(まこと)に升る大吉なるは。上志しを合すればなり。】
 九二之孚。有喜也。【九二の孚は。喜び有るなり。】
 升虛邑。无所疑也。【虛邑(きょゆう)に升る。疑う所なし。】
 王用亨于岐山。順事也。【王用て岐山(きざん)に亨(きょう)す。事に順うなり。】
 貞吉升階。大得志也。【貞吉階(きざはし)に升るは。大いに志しを得るなり。】
 冥升在上。消不富也。【冥(めい)升(しょう)上に在り。消(しょう)して富まざるなり。】
 
 47. 困
 澤无水。困。君子以致命遂志。【澤に水なきは。困。君子以て命を致し志しを遂ぐ。】
 入于幽谷。幽不明也。【幽谷(ゆうこく)に入る。幽(かす)かにして明かならず。】
 困于酒食。中有慶也。【酒食に困しむ。中にして慶び有り。】
 據于蒺蔾。乘剛也。入于其宮。不見其妻。不祥也。【蒺蔾(しつり)に據(よ)る。剛に乘るなり。其の宮に入りて。其の妻を見ず。不祥なり。】
 來徐徐。志在下也。雖不當位。有與也。【來ること徐徐(じょじょ)たり。志し下に在り。位に當らずと雖(いえど)も。與(く)み有り。】
 劓刖。志未得也。乃徐有說。以中直也。利用祭祀。受福也。【劓(はなき)られ刖(あしき)られて。志し未だ得ざるなり。乃(すなわ)ち徐(おもむろ)にして說び有り。中直(ちゅうちょく)を以てなり。用て祭祀(さいし)に利あり。福を受く。】
 困于葛藟。未當也。動悔。有悔吉。行也。【困于葛藟。未當也。動悔。有悔吉。行也。】
 
 48. 井
 木上有水。井。君子以勞民勸相。【木の上に水有るは。井。君子以て民を勞(ねぎら)い勸(すす)め相(たす)く。】
 井泥不食。下也。舊井无禽。時舍也。【井(せい)泥(ひじりこ)にして食われず。下なればなり。舊井禽(きゅうせいとり)なし。時に舍てらるるなり。】
 井谷射鮒。无與也。【井谷鮒(ふ)に射(そそ)ぐ。與(とも)なければなり。】
 井渫不食。行惻也。求王明。受福也。【井渫(せいきよ)くして食われず。行くもの惻(いた)むなり。王の明かなるを求めて。福を受くなり。】
 井甃无咎。修井也。【井甃(せいしゅう)咎なし。井を修むるなり。】
 寒泉之食。中正也。【寒(かん)泉(せん)の食(くら)ふ。中正なり。】
 元吉在上。大成也。【元吉にして上に在り。大いに成るなり。】
 
 49. 革
澤中有火。革。君子以治歷明時。【澤の中に火有るは。革。君子以て歷(こよみ)を治めて時を明かにす。】
鞏用黃牛。不可以有為也。【鞏(かたむ)るに黃牛を用う。以て為すあるべからざるなり。】
巳日革之。行有嘉也。【巳(き)日(じつ)之を革む。行きて嘉きこと有り。】
革言三就。又何之矣。【革言(かくげん)三(みたび)就(つ)く。又何(いず)くにか之(ゆ)かん。】
改命之吉。信志也。【命を改むるの吉は。志しを信ずればなり。】
大人虎變。其文炳也。【大人虎變す。其の文炳(かがや)けり。】
君子豹變。其文蔚也。小人革面。順以從君也。【君子豹變す。其の文蔚(うつ)たり。小人は面(おもて)を革む。順にして以て君に從うなり。】

50. 鼎
木上有火。鼎。君子以正位凝命。【木の上に火有るは。鼎。君子以て位を正し命を凝(あつ)む。】
鼎顛趾。未悖也。利出否。以從貴也。【鼎趾(あし)を顛(さかしま)にす。未だ悖(そむ)かざるなり。否を出すに利あり。以て貴きに從うなり。】
鼎有實。慎所之也。我仇有疾。終无尤也。【鼎に實(じつ)有り。之く所を慎しむなり。我が仇疾(あだやまい)有り。終に尤(とが)なし。】
鼎耳革。失其義也。【鼎の耳革まる。其の義を失するなり。】
覆公餗。信如何也。【公の餗(こながき)を覆(こぼ)す。信如何(いかん)ぞや。】
鼎黃耳。中以為實也。【鼎黃(こう)耳(じ)あるは。中以て實と為すなり。】
玉鉉在上。剛柔節也。【玉鉉(ぎょくげん)在り。剛柔節するなり。】
 
 51. 震
洊雷。震。君子以恐懼脩省。【洊(しきり)りに雷あるは。震。君子以て恐懼して脩省(しゅうせい)す。】
震來虩虩。恐致福也。笑言啞啞。後有則也。【震の來るときに虩虩(げきげき)たり。恐れて福を致すなり。笑言啞啞(あくあく)たり。後に則(のり)有るなり。】
震來厲。乘剛也。【震來る厲し。剛に乘ればなり。】
震蘇蘇。位不當也。【震(ふる)いて蘇蘇たるは。位當たらざればなり。】
震遂泥。未光也。【震(ふる)いて遂(つい)に泥(なず)む。未だ光いならず。】
震往來厲。危行也。其事在中。大无喪也。【震(ふる)いて往くも來るも厲しとは。行くことを危うしとするなり。其の事中に在り。大いに喪うなきなり。】
震索索。中未得也。雖凶无咎。畏鄰戒也。【震いて索索(さくさく)たるは。中未だ得ざればなり。凶と雖も无なし。鄰りの戒めを畏るればなり。】
 
52. 艮
兼山。艮。君子以思不出其位。【兼ねたる山は。艮。君子以て思うこと其の位を出でず。】
艮其趾。未失正也。【其の趾(あし)に艮(とどま)るは。未だ正を失せざるなり。】
不拯其隨。未退聽也。【拯(すく)わずして其れ隨う。未だ退き聽(き)かざるなり。】
艮其限。危薰心也。【其の限(こし)に艮まる。危うきこと心を薰(くす)ぶるなり。】
艮其身。止諸躬也。【其の身に艮まるは。この躬(み)に止まるなり。】
艮其輔。以中正也。【其の輔(つら)に艮まる。中を以て正なり。】
敦艮之吉。以厚終也。【艮るに敦(あつ)きの吉は。終りに厚きを以てなり。】
 
53. 漸
山上有木。漸。君子以居賢德。善俗。【山の上に木有るは。漸。君子以て賢德に居て。善俗。】
小子之厲。義无咎也。【小子の厲きは。義咎なし。】
飲食衎衎。不素飽也。【飲食衎衎(かんかん)たり。素(むな)しく飽(あ)かざるなり。】
夫征不復。離群醜也。婦孕不育。失其道也。利用御寇。順相保也。【夫征きて復らざるは。群(ぐん)醜(しゅう)を離るるなり。婦孕(はら)んで育われず。其の道を失するなり。用て寇を御ぐに利あるは。順(つつし)んで相い保(まも)ればなり。】
或得其桷。順以巽也。【或いは其の桷(たるき)を得。順にして以て巽(そん)なればなり。】
終莫之勝。吉。得所願也。【終にこれに勝つなく。吉なるは。願う所を得るなり。】
其羽可用為儀。吉。不可亂也。【其の羽用て儀と為すべく。吉なるは。亂るべからざるなり。】
 
54. 歸妹
澤上有雷。歸妹。君子以永終知敝。【澤の上に雷有るは。歸妹。君子以て終りを永くして敝(やぶ)れを知る。】
歸妹以娣。以恆也。跛能履吉。相承也。【歸妹娣(てい)を以てするは。恆を以てするなり。跛にして履むの吉なるは。相い承くればなり。】
利幽人之貞。未變常也。【幽人の貞に利あるは。未だ常を變えざるなり。】
歸妹以須。未當也。【歸妹以て須(ま)つは。未だ當らざればなり。】
愆期之志。有待而行也。【愆期之志。有待而行也。】
帝乙歸妹。不如其娣之袂良也。其位在中。以貴行也。【帝(てい)乙(いつ)妹を歸がしむ。其の娣(てい)の袂(そで)の良きに如かざるなり。其の位中に在り。貴(き)を以て行くなり。】
上六无實。承虛筐也。【上六實(み)なきは。虛筐(きょきょう)を承(ささ)ぐるなり。】
 
55. 豐
雷電皆至。豐。君子以折獄致刑。【雷電皆(み)な至るは。豐。君子以て獄(ごく)を折(さだ)め刑を致す。】
雖旬无咎。過旬災也。【旬(じゅん)と雖も咎なし。旬を過ぐれば災あるなり。】
有孚發若。信以發志也。【孚有りて發(はつ)若(じゃく)たりとは。信(しん)以て志しを發するなり。】
豐其沛。不可大事也。折其右肱。終不可用也。【其の沛(はい)を豐(おお)いにするは。大事に可ならざるなり。其の右の肱(ひじ)を折るは。終に用。】
豐其蔀。位不當也。日中見斗。幽不明也。遇其夷主。吉。行也。【其の蔀(しとみ)を豐(おお)いにす。位當らざるなり。日中に斗(と)を見るは。幽にして明らかならざるなり不也。其の夷主に遇えば。吉なるは。行けばなり。】
六五之吉。有慶也。【六五の吉なるは。慶びあるなり。】
豐其屋。天際翔也。闚其戶。闃其无人。自藏也。【其の屋(おく)を豐いにす。天(てん)際(さい)に翔(か)くるなり。其の戸を闚(うかが)うに。闃(げき)として其れ人なし。自から藏(かく)るるなり。】
 
56. 旅
山上有火。旅。君子以明慎用刑。而不留獄。【山の上に火有るは。旅。君子以て明かに慎んで刑を用いて。獄を留めず。】
旅瑣瑣。志窮災也。【旅のとき瑣瑣(ささ)たるは。志し窮(きわ)まって災いあるなり。】
得童僕貞。終无尤也。【童(どう)僕(ぼく)の貞を得るは。終に尤(とが)なきなり。】
旅焚其次。亦以傷矣。以旅與下。其義喪也。【旅のとき其の次(やど)りを焚(や)く。亦た以て傷(いた)まし。旅を以て下に與(くみ)す。其の義(ぎ)喪(うしな)うなり。】
旅于處。未得位也。得其資斧。心未快也。【旅于(ここ)に處(お)る。未だ位を得ざるなり。其の資斧を得て。心未だ快(こころよ)からざるなり。】
終以譽命。上逮也。【終に以て譽(よ)命(めい)あるは。上に逮(およ)ぶなり。】
以旅在上。其義焚也。喪牛于易。終莫之聞也。【旅を以て上に在り。其の義焚(ぎや)かるるなり。牛を易(えき)に喪う。終に之を聞くなきなり。】
 
57. 巽
隨風。巽。君子以申命行事。【風に隨うは。巽。君子以て命を申(かさ)ね事を行う。】
進退。志疑也。利武人之貞。志治也。【進み退く。志し疑うなり。武人の貞に利あるは。志し治まるなり。】
紛若之吉。得中也。【紛若の吉は。中を得ればなり。】
頻巽之吝。志窮也。【頻りに巽うの吝なるは。志し窮まるなり。】
田獲三品。有功也。【田して三品を獲るは。功有るなり。】
九五之吉。位正中也。【九五の吉は。位正中(せいちゅう)なればなり。】
巽在床下。上窮也。喪其資斧。正乎凶也。【巽って床下に在り。上に窮まるなり。其の資(し)斧(ふ)を喪う。凶なるに正しきなり。】
 
58. 兌
麗澤。兌。君子以朋友講習。【麗(つ)ける澤は。兌。君子以て朋友(ほうゆう)講習(こうしゅう)す。】
和兌之吉。行未疑也。【和して兌(よろこぶ)の吉なるは。行(ゆ)いて未だ疑(うたが)はしからざるなり。】
孚兌之吉。信志也。【孚(まこと)に兌(よろこぶ)の吉は。志(こころざし)を信(まこと)にすればなり。】
來兌之凶。位不當也。【來(きた)りて兌ばれんとするの凶。位當らざればなり。】
九四之喜。有慶也。【九四の喜は。慶(けい)有るなり。】
孚于剝。位正當也。【孚に剝あるは。位正に當ればなり。】
上六引兌。未光也。【上六引いて兌ぶは。未だ光(おお)いならざるなり。】
 
59. 渙
風行水上。渙。先王以享于帝立廟。【風水上に行くは。渙。先王以て帝(てい)に享(きょう)し廟(びょう)を立つる。】
初六之吉。順也。【初六の吉なるは。順えばなり。】
渙奔其机。得願也。【渙のとき其の机(おしま)に奔(はしる)るは。願いを得るなり。】
渙其躬。志在外也。【其の躬(み)を渙(かん)するは。志し外に在るなり。】
渙其群。元吉。光大也。【其の群(むれ)を渙す。元吉。光(こう)大(だい)なればなり。】
王居无咎。正位也。【王居咎なきは。正位なればなり。】
渙其血。遠害也。【其の血(いたみ)を渙するは。害に遠ざかるなり。】
 
60. 節
澤上有水。節。君子以制數度。議德行。【澤の上に水有るは。節。君子以て數度(すうど)を制し。德行を議す。】
不出戶庭。知通塞也。【戸庭を出でざるは。通(つう)塞(そく)を知りてなり。】
不出門庭凶。失時極也。【門庭を出でず凶なるは。時を失すること極まればなり。】
不節之嗟。又誰咎也。【節せざるの嗟(なげき)。又た誰かを咎めん。】
安節之亨。承上道也。【安節(あんせつ)の亨は。上(かみ)を承(う)けて道あればなり。】
甘節之吉。居位中也。【甘(かん)節(せつ)の吉なるは。位に居(お)りて中なればなり。】
苦節貞凶。其道窮也。【節に苦しむ貞しけれども凶。其の道窮まるなり。】
 
61. 中孚
澤上有風。中孚。君子以議獄緩死。【澤の上に風有るは。中孚。君子以て獄(ごく)を議(はか)り死を緩(ゆる)くす。】
初九虞吉。志未變也。【初九の虞(はか)れば吉なるは。志し未だ變ぜざればなり。】
其子和之。中心願也。【其の子之に和するは。中心願えばなり。】
或鼓或罷。位不當也。【或いは鼓(こ)し或いは罷(や)むるは。位當らざればなり。】
馬匹亡。絕類上也。【馬の匹(たぐい)亡(うしな)うは。類を絶ちて上るなり。】
有孚攣如。位正當也。【孚有りて攣如(れんじょ)たるは。位正に當ればなり。】
翰音登于天。何可長也。【翰音(かんおん)天に登る。何ぞ長かるべけんや。】
 
62. 小過
山上有雷。小過。君子以行過乎恭。喪過乎哀。用過乎儉。【山の上に雷有るは。小過。君子以て行いは恭(きょう)に過ぎ。喪(そう)は哀(あい)に過ぎ。用は儉(けん)に過ぎる。】
飛鳥以凶。不可如何也。【飛鳥以て凶なるは。如何ともすべからざるなり。】
不及其君。臣不可過也。【其の君に及ばず。臣過ぐるべからざるなり。】
從或戕之。凶如何也。【從って或いは之を戕(そこな)う。凶なること如何(いかん)ぞや。】
弗過遇之。位不當也。往厲必戒。終不可長也。【過ぎずして之に遇う。位當らざるなり。往けば厲し必ず戒めよ。終に長かるべからざるなり。】
密雲不雨。已上也。【密雲あれど雨ふらず。已(はなは)だ上(たか)ければなり。】
弗遇過之。已亢也。【遇わず之を過ぐ。已(すで)に亢(きわ)まればなり。】
 
63. 既濟
水在火上。既濟。君子以思患而豫防之。【水火(ひ)の上に在るは。既濟。君子以て患(かん)を思い豫(あらか)じめ之を防ぐ。】
曳其輪。義无咎也。【其の輪を曳く。義咎なきなり。】
七日得。以中道也。【七日にして得るは。中道を以てなり。】
三年克之。憊也。【三年にして之に克つ。憊(つか)れたるなり。】
終日戒。有所疑也。【終日戒(いまし)むるは。疑う所有ればなり。】
東鄰殺牛。不如西鄰之時也。實受其福。吉大來也。【東鄰(とうりん)牛を殺すは。西鄰の時あるに如かざるなり。實(まこと)に其の福を受くるは。吉大いに來るなり。】
濡其首厲。何可久也。【其の首(こうべ)を濡らす厲し。何ぞ久しかるべけんや。】
 
64. 未濟
火在水上。未濟。君子以慎辨物居方。【火(ひ)水上に在るは。未濟。君子以て慎んで物を辨(べん)じ方(ほう)に居く。】
濡其尾。亦不知極也。【其の尾を濡らす。亦た極(きょく)を知らざるなり。】
九二貞吉。中以行正也。【九二の貞吉なるは。中以て正を行えばなり。】
未濟征凶。位不當也。【未濟征けば凶なるは。位當らざればなり。】
貞吉悔亡。志行也。【貞しければ吉にして悔い亡ぶ。志し行わるるなり。】
君子之光。其暉吉也。【君子の光。其の暉(ひかり)あって吉。】
飲酒濡首。亦不知節也。【酒を飲んで首(こうべ)を濡らす。亦た節を知らざるなり。】