易の意義『三義』
カメレオンの象形文字『易』
中国古代、殷・周時代の鐘や鼎の銘に書かれている鐘鼎古文に『易』という文字は蟲形に造られてあり、易という文字は蜥蜴の象形文字であります。蜥蜴といっても現代で言えば『カメレオン』の様な蜥蜴の種類であり、古代には多くカメレオンが多く存在し、現代よりももっと身近な存在であったと考えられております。何故その蜥蜴の名前がこの書物の名になるのかと言えば、明の文人である楊慎(1488年 - 1559年)は「易は千変万化を現わす書なので、体の色がよく変わる蜥蜴の名前を命名した」という。即ち、蜥蜴は独特の保護色を持つ生物であり、光や周囲の環境に合わせて体の色を変化させる『変易』の意義から転用して『易』と命名した訳であります。また易には日と月を現わすという説もあり、陰と陽の哲学であるから陽の日と陰の月で易というのは一見すると筋の通った物であると思いますが、それは誤りです。そもそも易の下の文字は月では無いので日月説には無理があります。
易の根幹たる思想『易の三義』
易には3つの意義があります、それを『易の三義』と申します。
易の根幹たる思想であり、易の理でもあります。
・易の三義
1. 変易
2. 不易
3. 易簡
運命の変化『変易』
易は運命を探求した書物です、運命というのは静止的な物ではなく千変万化して変化極まりないものであり、それが『変易』でありまして、運命は蜥蜴が体の色を変化させるが如く変転して行くので、変易とは運命の変転を捉えるという意義があります。『変易』は天の性質である万物を造化する根源の作用を持ちます、形の無かった宇宙が最初にあって、その後に形のある宇宙が生成されたのも変易であります。変易は宇宙の変転の理を説くものであり、
運命の因果『不易』
『不易』は変易に対応する存在であり、宇宙の森羅万象は一瞬の間も止まらずに転変し続け刻々と変化をする、この変化の相を捉えるのが『変易』である、然しその変化流転の中にも不変の法則があります、変化というのは変わらないという不変の法則があるから存在していられます『不易』とは絶対的な法則であり、例えば大地に四季が訪れるのも春夏秋冬の景色は季節ごとにその色を変化させたり気温を変化させたりと変化をさせるが、それは規則正しい時間の中で一定にリズムが刻まれてそれが一巡したら元に戻る、この変わらない絶対的な宇宙の自然法則が不易です、真理の究明とはその変転止まざる運命の変易の法則の中に、永久に不易の法則を見出す事であります。不易は地の性質である万物を包容し統一・含蓄する作用を持ちます、母の如き大徳であります。
運命は簡単明瞭な一定の法則『易簡』
易簡とは宇宙の進化と発展の法則には原理がある、太陽は東から昇り西に沈む、夏は暑く冬は寒い様にそれらは簡単明瞭な一定の法則に従っている、それを『易簡』と呼ぶ。その進化と発展の法則性を理解さえすれば、運命は容易く扱うことが出来る、本当の易者は占わずとはこの事であり、運命の変易と不易の法則さえ理解する事が出来れば、いちいち占わずとも運命という物は理解できるものであります。
乾以易知。坤以簡能。易則易知。簡則易從。(繋辞上伝)
乾は易を以て知どり、坤は簡を以て能くす。易なれば則ち知り易く、簡なれば則ち従い易い。
という辞がありますが、易は『やさしい』という意義であり簡は『簡単明瞭』という事で、天は万物を照らし地は天の気を受けて万物を生成化育する、その様に造化の作用というのは極めて易簡であります。その原理を探求しその原理に基づいて人類が意識的に変化して行く事が易簡であり、複雑な物事を柔軟に捉えて、物事を簡略化して実行するが故に人は道を良く実践する事が叶います。森羅万象の変化の中には必ず不変の法則が存在し、その法則は簡単明瞭な物である、これが易の三義であります。